糖尿病は、血液中の糖分をうまくコントロールできなくなる病気です。
通常は食べ物を消化すると血糖値が上がり、インスリンというホルモンによって血糖値が調整されますが、糖尿病の場合はインスリンがうまく働かない、または十分に分泌されないため、血糖値が高いままの状態になり、全身のさまざまな器官に影響を与えます。
糖尿病は目にも影響を与える可能性があります。
糖尿病の進行に伴い、視力に問題が現れることがあり、放置すると深刻な結果を招くことがあるのです。
そこで今回は、糖尿病が目にどのような影響を引き起こすのか、そしてどのように予防したり早期発見したりできるのかについて詳しく見ていきましょう。
糖尿病をお持ちの方がICL手術を受けることができるのかについてもICL手術の適応条件に触れて解説したいと思います。
この記事でわかること
- 糖尿病とは
- 糖尿病と目の関係
- 糖尿病がある場合でもICL手術を受けることはできるのか
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糖尿病とはどんな病気?
糖尿病は血糖値が高い状態が長期間にわたって続く病気です。
血糖値とは血液中に含まれるブドウ糖の濃度のことで、食事の内容や量、運動やストレスによって変動します。
ご飯やパンなどの炭水化物を食べると、まず胃、小腸で消化・吸収され、ブドウ糖に変化します。
血液中に含まれるブドウ糖の濃度である「血糖値」が高くなると、すい臓から分泌される「インスリン」というホルモンによってブドウ糖がエネルギーに変換され、血糖値は約70~120mg/dlの範囲内でコントロールされます。
人間の体は食べ物や飲み物を消化・分解してできるブドウ糖をエネルギー源としています。
インスリンは、食後に血糖値が上がり過ぎないようブドウ糖の量を調節したり、ブドウ糖を細胞に送り込んで活動エネルギーに変えるなど、重要な働きをしています。
健康な人であればインスリンの働きによって血糖値は一定の範囲内に収まりますが、糖尿病の方の場合はインスリンが十分に作用せず、血液中のブドウ糖が有効に使われずに、血糖値が高くなります。
また、糖尿病の型によってはインスリンの分泌自体がなくなってしまいます。
遺伝、肥満、食べすぎや飲みすぎ、運動不足など原因は多岐に渡りますが、インスリンの分泌や働きに障害が起こると糖尿病を発症します。
インスリンが不足したり働きが悪くなると、体の細胞にうまくブドウ糖を取り入れることができず、高血糖の状態になり、エネルギーが筋肉や内臓に届かなくなってしまいます。
高血糖の状態が続くと、血管障害や神経障害など、全身に様々な影響を及ぼし、合併症を引き起こします。
糖尿病の患者数は国内外問わず増加傾向にあります。
2020年度の厚生労働省の調査によると日本の糖尿病患者の総数は230万3000人ほどいると報告されており、日本人の4人に1人が糖尿病もしくはその予備軍とされています。
糖尿病自体は直接命に関わる病気ではありませんが、進行して合併症を起こすと命に関わるリスクが高まります。
目も糖尿病による合併症が起こる可能性がある器官の一つです。
糖尿病の原因と症状
糖尿病は以下のような生活習慣や危険因子が原因となって発症する可能性が高いとされています。
多くの場合は生活習慣の改善でリスクを減らすことができます。
- 過食
- 多量の飲酒
- 喫煙
- ストレス
- 運動不足
- 高血圧
- 肥満
- 脂質異常症
- 遺伝的要因
糖尿病の初期は血糖値が高い状態(高血糖)が持続するだけで、痛みなどの症状はありません。
そのため、初期段階では症状を自覚することはほとんどないと言えます。
しかし高血糖の状態が長期的に続くと血管が傷ついてしまい、進行すると以下のような様々な症状が表れます。
- 多尿
- 多飲
- のどの渇き
- 体重減少
- 吐き気やめまい
- イライラ
- 疲れやすい
さらに症状が進行すると合併症などを引き起こし、命に関わるリスクが高まります。
糖尿病による合併症は糖尿病網膜症、糖尿病神経障害、糖尿病腎症と大きく3つあります。
糖尿病網膜症、糖尿病神経障害、糖尿病腎症は糖尿病の3大合併症と呼ばれ、悪化すると失明したり透析が必要になるなど日常生活に大きな支障を及ぼします。
今回はICL手術を検討している方向けに、視力に影響を生じる「糖尿病網膜症(とうにょうびょうもうまくしょう)」についてピックアップして解説します。
「糖尿病性網膜症」とは?糖尿病と目にはどんな関係があるの?
糖尿病は血糖値が高い状態が長期間にわたって続く病気であり、血液の流れが妨げられるため全身の血管に影響を与えます。
影響を与えるのは「目」の血管も例外ではありません。
糖尿病によって網膜の血流状態が悪くなったり、血管が詰まったり傷つけられたりすると、目に様々なリスクがあり、最悪の場合失明してしまいます。
糖尿病による3大合併症の一つに糖尿病性網膜症(とうにょうびょうもうまくしょう)があります。
目に影響を与える糖尿病の合併症には網膜症、白内障、角膜症、緑内障、眼筋麻痺、視神経症などがありますが、糖尿病網膜症が最も重要な合併症とされています。
糖尿病性網膜症(網膜症と呼ばれることもある)は、失明するリスクがあり、糖尿病による合併症の中でも非常に危険性が高いです。
自覚症状がないうちに進行し、自覚症状が現れたときにはすでに失明の危機に瀕した状態であることがほとんどです。
糖尿病など持病がある場合でもICL手術を受けることはできるの?
糖尿病などの全身疾患をお持ちの方はICL手術を受けることができないと判断されるケースがほとんどです。
糖尿病をはじめとする全身疾患があると手術による身体への負担が大きくなるため、ICL手術を受けることは難しいとされており、ICL手術のガイドラインにも記載があります。
糖尿病予備軍など、まだ糖尿病を発症していない場合は経過観察となり、生活の改善や治療によってICL手術を受けられると判断される場合もあります。
糖尿病がない場合でもICL手術を受けられるかどうかは適応検査の結果次第となります。
いずれにしてもICL手術を受ける場合は適応検査、精密検査を通じて医師の判断を仰ぐ必要がありますので、まずはご自身がICL手術を受けられるかどうか、検査の結果次第で相談するようにしてくださいね。
まとめ
今回は、糖尿病について説明するとともに、糖尿病によって目にどのような影響があるのかについて解説しました。
糖尿病をお持ちの方はICL手術を受けることができない可能性があります。
生活習慣などで糖尿病予備軍の疑いがあるなどと言われている方は、生活習慣を改善するところから始めてみてくださいね。
重篤な全身疾患がなければICL手術を受けることができます。
ICL手術の流れや費用相場、メリット・デメリットなどについて詳しく知りたいという方は以下の記事もぜひご一読くださいね。
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