ICL手術とは、人工の小さなレンズを眼の中に挿入し、近視や乱視などの屈折異常を矯正する手術です。
視力を矯正する身近なアイテムとしてはメガネやコンタクトレンズがありますが、それぞれメリット・デメリットがあり、どの矯正方法が向いているかは一人一人の目の状態やライフスタイルなどによっても異なります。
屈折矯正手術としてはICL手術のほかにもレーシック手術がありますが、こちらもそれぞれに利点がありますので、自分にどの手術が合っているのかも気になりますよね。
今回は、近視をはじめとする屈折異常のメカニズムについて解説し、どのような視力矯正方法の種類があるのかご紹介したいと思います。
この記事でわかること
- 視力が悪い人の増加について
- 屈折異常とは何か
- 視力矯正方法の種類と特徴
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視力が悪い人が増え続けている現代
パソコンやスマートフォンが広く普及し、情報社会が高度化していくに伴い、これまでよりも目を酷使しがちな時代になりました。
近視人口は世界的に増加しており、2000年時点における世界の近視人口は14億600万人、強度近視人口は1億6,300万人であり、今後も増え続けていくと推測されています。
大人だけでなく、子どもの近視も増えており慶應義塾大学医学部 眼科学教室の近視研究チームの調査結果(2017年)によると、東京都内の小中学校で近視の有病率は小学生で76.5%、中学生で94.9%という結果になっています。
引用元:小中学生の近視増加傾向への警鐘
パソコンやタブレット、スマートフォンなどの長時間の使用によって従来よりも若者の視力低下が著しくなっていると考えられます。
屈折異常とは?
人は目で光を感知し、その情報を脳に送ることでモノを見ています。
目の構造はカメラと似ているため、目の器官はよくカメラの部品に例えられます。
角膜、水晶体がレンズ、網膜がフィルムの役割にあたります。
参照:株式会社ニコン
目に入ってくる光がレンズの役割をする角膜、水晶体を通って屈折し、フィルムである網膜で像を結ぶことでモノがはっきりと見えます。
網膜上にピントが合ってはっきりとモノが見える状態を正視といいます。
網膜上に正しくピントが合わず、網膜の前後にピントがずれてしまうとぼやけたり、かすんだりしてモノがはっきり見えません。この状態を屈折異常といいます。
正視
目に入った光が角膜と水晶体で屈折し網膜上でピントが合う状態です。
遠近ともに裸眼ではっきりと見ることができます。
近視
目に入った光が網膜よりも手前で像を結ぶ状態を「近視」といいます。
近距離ははっきり見えますが、遠距離はぼやけて見えます。
角膜や水晶体の屈折力が強いか、眼軸(目の前後の長さ)が長いために起こります。
近視は凹レンズの眼鏡やコンタクトレンズで網膜にピントが合う状態にして矯正します。
強度近視
度数はレンズの屈折度を示す「ディオプター(D)」という値で表され、近視でも遠視でもない状態を0とし、マイナスが大きいほど強い近視を表します。
度数が-6.00D以上の近視は「強度近視」と分類されます。
近視など屈折異常がない正常な眼球は眼軸の長さが24mm程度であるとされていますが、強度近視は眼軸がこれよりも異常に長い状態です。
遠視
目に入った光が網膜よりも後ろで像を結ぶ状態を「遠視」といいます。
遠距離ははっきり見えますが、近距離はぼやけて見えます。
角膜や水晶体の屈折力が弱いか、眼軸が短いために起こります。
遠視は凸レンズの眼鏡やコンタクトレンズで網膜にピントが合う状態にして矯正します。
乱視
目に入った光が角膜の歪みによって網膜上のどこにも像を結ばない状態を「乱視」といいます。
角膜や水晶体が一つの方向に歪んだ状態を「正乱視」といい、眼鏡で矯正することができます。
角膜の表面に不規則なでこぼこや歪みが生じている状態を「不正乱視」といい、こちらは眼鏡で矯正することは難しいです。
老視
加齢によって目のピント調節力が衰え、近距離のものを見る時にピントが合いづらくなる状態を「老視」といいます。年齢を重ねると水晶体の弾力が失われ、水晶体の厚みを変えて光を屈折させてピントを合わせることができなくなり、老視の状態が起こります。
年齢を重ねれば誰にでも起こるもので、「老眼」とも呼ばれます。
どのような視力矯正方法があるの?
近視や乱視をはじめとする屈折異常は根本的に治すことはできませんが、網膜上にピントが合うように屈折率を調節することで矯正が可能です。
屈折異常を矯正する方法として以下のような種類があります。
メガネ |
コンタクトレンズ |
オルソケラトロジー |
|
矯正方法 |
目の前にレンズを |
目の上にレンズを |
就寝時にレンズを装用し |
見え方 |
視野が狭く曇りやすい |
鮮明 |
安定するのに時間がかかる |
ケア |
簡単 |
やや煩わしい |
やや煩わしい |
コスト |
物による |
長期的に見ると高額 |
やや高額 |
レーシック |
ICL |
|
矯正方法 |
レーザーで角膜を削り |
目の中にレンズを挿入し |
見え方 |
鮮明 |
レーシックよりも鮮明 |
ケア |
不要 |
不要 |
コスト |
ICLよりも低額 |
高額 |
ご自身に合った視力矯正方法を見つけるため、それぞれのメリットとデメリットを見てみましょう。
メガネによる矯正
メガネをかけることでレンズを通して目に入る光の屈折を調整し、適切な焦点にピントが合うようにして視力を矯正します。
近視には凹レンズ、遠視には凸レンズ、乱視には円柱レンズを用います。
⚫︎メリット
・物によるが比較的低額で手に入る
・目に直接入れないため安全性が高い
・ケアが簡単
⚫︎デメリット
・外見の印象に影響する
・スポーツの種類によっては危険
・曇ることがあるためお風呂などでの使用が不便
・フレームの外側が見えにくく視野が限られる
コンタクトレンズによる矯正
目の表面にコンタクトレンズを装着することで目に入る光の屈折を調整し、適切な焦点にピントが合うようにして視力を矯正します。
コンタクトレンズの場合も近視を矯正する際は凹レンズ、遠視を矯正する際は凸レンズを使用します。
⚫︎メリット
・外見の印象に影響を与えない
・スポーツをする時も快適に使用できる
・左右左に対応できる
・カラーコンタクトレンズなどをおしゃれを楽しむこともできる
⚫︎デメリット
・毎日のケアが必要
・異物感や不快感を感じることがある
・目の中に直接入れるため取り扱いによっては危険が伴う
・長期的にみるとコストが高い
オルソケラトロジーによる矯正
オルソケラトロジーレンズという特殊なレンズを就寝時に装着することで角膜の形状を一時的に変化させ、日中裸眼で過ごすことができるように矯正します。
オルソケラトロジーレンズは内面に複数のカーブが施されており、中央部は扁平になっています。
角膜を圧迫し、角膜の形を平坦にすることで屈折率を変えて視力を矯正します。
⚫︎メリット
・日中裸眼で過ごすことができる
・外科的な手術が不要
⚫︎デメリット
・毎日のケアが必要
・目の中に直接入れるため取り扱いによっては危険が伴う
・夜間にハローグレアが生じる場合がある
レーシックによる矯正
エキシマレーザーというレーザーで角膜を削って形状を変えることで、網膜に正しくピントが合うように屈折率を変化させ、視力を矯正する手術です。
⚫︎メリット
・ICL手術に比べて費用が安い
・軽度近視の矯正が得意
⚫︎デメリット
・適応範囲が狭い
・一度削った角膜は元に戻すことができない
・稀に視力の再低下が起こる
・一時的にハローグレアやドライアイが生じる可能性がある
ICL手術による矯正
角膜を数ミリ切開し、目の中に人工のレンズを挿入することで屈折異常を矯正する手術です。
レーシックが適応外とされた方も手術を受けられる可能性があり、特に強度近視の方にとって有力な屈折矯正治療です。
⚫︎メリット
・ケアやメンテナンスが不要
・レーシックと比較してクリアな見え方
・近視戻りが少なく長期的な視力の安定が期待できる
・角膜を削らないためレンズを取り出すことで元の状態に戻すことができる
⚫︎デメリット
・レーシックよりも手術費用が高い
・手術であるため合併症や感染症などのリスクが0ではない
まとめ
今回は、近視をはじめとする屈折異常のメカニズムと屈折矯正の種類について解説いたしました。
近視や乱視などの屈折異常がどのような仕組みで生じているのか、それに対してどのような視力矯正方法があるのかを知ることで、自分自身にあった治療方法を選択できるようになります。
手術を選択する前に、まずは屈折異常の仕組みや屈折矯正治療の種類についてぜひ今回の記事を参考に理解を深めてみてくださいね。
ICL手術で屈折異常が矯正できる仕組みについては以下の記事でより詳しくまとめています。
こちらもぜひチェックしてみてくださいね。
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ICL手術の流れや費用、メリット・デメリットなど詳しくは以下の記事で紹介していますのでこちらもぜひご一読ください。
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