ICL手術は生体適合性の高い人工のレンズを眼内に挿入し、屈折率を変えることで近視をはじめとする屈折異常を矯正する手術です。
長期的に良好な見え方が維持できると期待でき、近視戻りも少ないとされているため、一度手術を受ければ老眼や白内障等の病気を発症しない限り半永久的に視力が回復します。
しかし挿入するレンズの度数が最適でない場合、希望する見え方にならず、レンズ交換をするなど再手術となってしまうケースがあります。
ICL手術は再手術が可能とはいえ、目の負担を考えると精度の高い検査結果をもとに最適な度数選択を行い、一度の手術で済むことが望ましいです。
一人一人に最適な眼内レンズを選択するためには、検査機器も最新の技術を搭載し高精度であることが求められます。
そこで今回は、ICLレンズの度数選択の重要性について解説するとともに、検査で用いられる機器の役割についてご紹介したいと思います。
この記事でわかること
- ICLレンズの度数選択の重要性
- 術前検査の精度向上に役立つ検査機器
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ICL手術はレンズの度数選択が鍵!
ICL手術は合併症等のリスクが少なく、安全性の高い屈折矯正手術です。
しかし、良好な見え方を手にいれるためには手術を正確に行う医師の腕が必要なのはもちろんのこと、術前検査・カウンセリングを経て決定するレンズの度数選択がとても重要になります。
ICL手術の前に検査によって正確に目の状態を把握し、最適な度数を計測するため、レンズの度数選択を誤ってしまうことは稀なことではありますが、「度数が合わない」「想定した見え方と違う」といったことになるとレンズ交換が必要と判断され、再手術になるケースがあります。
レンズの度数選択を誤ると、術後クリアな見え方にならないだけでなく、そのほかの弊害を引き起こす可能性もあります。
例えば「過矯正」です。
過矯正とは、読んで字の如く「矯正し過ぎてしまった」状態であり、近視を矯正しすぎることで遠視の症状が現れる状態を指します。
過矯正になると眼精疲労や頭痛、吐き気などを引き起こすことがあり、レンズ交換が必要となる場合があります。
ICL手術はレンズを挿入するために角膜を数ミリ切開しますが、レーシックと異なり角膜を削らないため、再手術が可能です。
レンズの度数が合わなかった場合もレンズ交換という対応で再手術ができますが、目の負担や少なからず手術のリスクがあることを考慮すると、可能な限り一度の手術で最適な視力を得ることが望ましいです。
検査の精度を上げるために複数回にわたって術前検査を行う場合もあります。
それだけ目の状態を正しく知り、最適な度数選択をすることが重要であるということです。
また、コンタクトレンズを使用している方は術前検査の前に一定期間、装用を中止するよう指示があります。
これは検査当日までコンタクトレンズをつけていると角膜の正確な形状が測定できないためです。
本来の角膜の形状を正しく把握するためにも、医師の指示に従い、一定期間コンタクトレンズを装用しないよう注意しましょう。
装用を中断する期間は使用しているレンズの種類や医師の判断によっても異なりますので、必ず手術を受ける医療機関の指示を仰いでください。
レンズの度数選択は検査結果からだけでなく、術後の見え方をどの程度に設定するか患者さんの要望やライフスタイルも踏まえ、慎重にカウンセリングを行い決めていきます。
日常的にスポーツをする、デスクワークでパソコンを眺める時間が長いなど、日頃どのような生活を中心に送っているかなども踏まえて度数決定を行うことにより、術後より快適な見え方を手に入れることができるでしょう。
術後視力の回復を実感し始めるのには早い方で翌日、基本的には数日〜1週間ほどかかります。
1ヶ月前後で見え方に慣れてくるため、レンズの度数が合っているかの判断は術後1ヶ月前後の期間に判断することが多いです。
検査の精度を向上する最新機器のココがすごい!
ICL手術をはじめ、屈折矯正治療に力を入れている眼科・クリニックでは、術前検査の精度を向上するためにも最新の検査機器を取り入れ、角膜の形状や目のサイズなどの測定をより正確に行えるように設備を整えています。
精度の高い検査結果に基づいて最適なレンズを選ぶことは患者さんの術後の快適な生活につながります。
ここからはICL手術を含む様々な手術で活躍する、最新の検査機器について簡単にご紹介します。
ICL手術を行っている眼科・クリニックでは、公式ホームページ上で検査機器や手術の設備を紹介しているところも多いです。
◆治療方針の決定に重要な役割を果たす機器「Mirante」
参照:株式会社ニデック
網膜はカメラにおけるフィルムの役割を果たす器官で、10層の透明な膜で構成されています。
この「Mirante」という機器を使うことで、網膜のどの層にどういった異常があるかを特定することができ、より精密な診断をすることが可能になりました。
コントラスト感度が高く、鮮明な眼底画像が撮影できるため、網膜の状態を鮮明な画像で診断することができます。
視力に影響を及ぼす網膜疾患や緑内障、黄斑疾患、硝子体の病気など視神経疾患の診断に役立ち、治療方針の決定に重要な役割を果たします。
点眼薬による散瞳が不要であり、スピーディーかつ患者さんにとって負担の少ない眼底検査を可能にしてくれる点も大きな魅力です。
◆眼内レンズの最適な度数決定に寄与する「IOLマスター500/700」
参照:リィツメディカル
IOLマスターは眼球の長さや角膜の形状を解析し、眼内レンズの度数を決定する際に用いられる屈折測定装置です。
従来は目に直接触れる「接触方式」でしか測定できなかった眼軸長の測定が、IOLマスターによって「非接触方式」で測定可能になりました。
痛みもなく、角膜障害のリスクを回避して測定することができます。
◆1台で屈折検査・眼圧測定・角膜形状の3つの検査ができる機器「TONOREF」
参照:株式会社ニデック
遠視・近視・乱視などの屈折度数や角膜のカーブを測定したり、角膜に空気をあてた瞬間の眼の硬さや角膜の厚さを調べることができます。
複数回測定することで平均値を調べるなどして精度を高めます。
◆ICLレンズのサイズ測定の精度を向上する「CASIA2」
眼の前面を非接触でスキャンすることによって角膜、虹彩、水晶体、前房の詳細な状態を解析できる装置です。短時間で前眼部の3次元撮影が可能であり、病気や病気の初期兆候を発見することができます。
また、瞳孔サイズを測定することもでき、従来は肉眼での確認だったICLレンズのサイズ測定の精度が格段に向上されています。
◆多角的な解析で見えにくさの原因を検出する「KR‐1W」
参照:リィツメディカル
1台で波面収差測定、角膜形状測定、瞳孔径測定、不正乱視成分などの情報を検出し、分析できる機器です。
近視・遠視・乱視以外の屈折異常のことを高次収差(不正乱視)といい、その状態を測定することが可能です。
様々な角度から解析を行うことで、見えにくさの原因を他覚的に検出することができます。
◆屈折矯正手術の検査に必要不可欠な「ANTERION」
角膜の形状や高次機能を解析することができ、眼内レンズを評価する際や屈折矯正手術の検査に必要不可欠な機器です。1台で前眼部全体を総合的に評価することが可能です。
従来よりも高精細な三次元断層画像が撮影でき、眼の状態をより細部まで把握することに役立ちます。
◆「RS-3000」
網膜や角膜などの疾患を詳細にスキャンすることができる機器です。
網膜、脈絡膜、角膜、隅角の断層写真を撮影することで網膜疾患や黄斑部病変の診断を行います。
◆「ALー4000」
超音波を用いて眼軸長(眼球の奥行き)や角膜の厚みを測定する機器です。
◆「APー7000(Kowa)」
視野(見える広さとその感度)を測定する機器です。
◆「NSPー9900」
角膜内皮細胞を撮影する機器です。
◆「UDー800」
光学的検査では難しい隅角・虹彩・毛様体から周辺網膜までの眼球前方の部分の精密な観察ができる機器です。
まとめ
今回は、ICL手術におけるレンズの最適な度数選択の重要性と、検査の精度を高めてくれる最新鋭の検査機器について解説いたしました。
検査・手術を受ける側である患者さんはなかなか検査機器について関心を寄せる機会は少ないかもしれませんが、知っておくとより術前検査や結果の精度を高めることの重要性について理解が深まることと思います。
ICL手術の流れやメリット・デメリット、合併症等のリスクについても詳しく知りたいという方は、以下の記事に詳しくまとめていますのでこちらもぜひチェックしてみてくださいね!
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