ICL手術は低リスクであると学会からも報告されている安全性の高い屈折矯正手術です。
しかし手術である以上、合併症などが起こり得る可能性も理解しておく必要があります。
同じ屈折矯正手術であるレーシックはドライアイになるというデメリットがよく挙げられていますが、ICL手術の場合はどうなのでしょうか。
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この記事でわかること
- ドライアイの症状と原因
- ICL手術とドライアイの関係性
ドライアイってどんな症状?
涙の分泌量が不足したり成分のバランスが崩れたりすることによって目の中に涙が均等に行きわたらなくなり、目が乾燥している状態をドライアイと言います。
国内でのドライアイ患者数は2,200万人以上、世界では10億人以上いると推測されています。
ドライアイになると目が乾く、目が疲れやすくなる、物がかすんで見える、目に不快感があるといった症状が生じ、目の表面の細胞が傷ついてしまうこともあります。
頭痛やめまい、肩こりなど体の不調にもつながります。
目の表面は角膜とよばれる透明の薄い膜で覆われており、角膜の一番外側にある角膜上皮とよばれる層が外の刺激などから目を守るバリアの役割をしています。
ドライアイが進行するとこの角膜上皮が剥がれる角膜上皮剥離といった病気を発症することもあります。
ドライアイは目の不快感や見えにくさを生じるれっきとした涙の「病気」と言えますが、自覚症状があるにもかかわらず眼科を受診しないなど、重く捉えていない患者さんが多いです。
ドライアイを放置して重篤化すると角膜や結膜の損傷を引き起こし、感染症や角膜炎、結膜炎を発症する可能性がありますので、早期に眼科を受診し、治療を受けるようにしましょう。
ドライアイになる原因は?
涙は目の表面をおおい、目を守るバリアのようなはたらきをしています。
また、まばたきは涙の分泌を促す刺激となって涙を出したり、目の表面に涙を均等に行きわたらせるといったはたらきがあります。
これらのはたらきが正常に行われなくなる、すなわち涙の量や成分のバランスが崩れたり、まばたきの頻度が減ったりすることでドライアイになりやすくなります。
ここからはドライアイになる主な原因をご紹介します。
加齢
年齢を重ねるとともに分泌される涙の量が減ったり質が悪くなったりするため、目の中で涙が十分に行きわたらず乾燥しやすくなります。
コンタクトレンズ
コンタクトレンズを長時間装用しているとレンズが乾き、失われた水分を補おうとレンズが涙を吸ってしまい、目の中が乾きます。
含水率が高いレンズほど吸う涙の量も多くなるため、目が乾燥しやすくなります。
パソコンやスマートフォンの使用
パソコンやスマートフォンの画面を長時間にわたって注視していると、まばたきが不完全になったり回数が減ってしまい、目の中に十分な涙が行きわたらず、乾燥しやすくなります。
エアコンの使用
エアコンの使用により部屋の中の湿度が下がり空気が乾燥すると涙が蒸発しやすくなり、目が乾燥します。
また、エアコンの風が当たることでも目が乾きやすくなります。
アイメイクによる汚れや詰まり
涙は油・水・ムチンという3つの成分でできており、油はまつげの付け根付近にあるマイボーム腺と呼ばれる部分から分泌されます。
マイボーム腺は両目で合わせて100本ほどありますが、アイメイクでふさがれてしまったり、汚れが詰まったりしてうまく分泌されなくなることがあります。
油がうまく分泌されなくなると涙の成分バランスが崩れ、ドライアイになりやすくなります。
ストレス
実はストレスもドライアイの原因になり得ます。
涙の分泌は、リラックス状態で副交感神経が優位な時に増えると言われています。
ストレスがかかり、交換神経が優位な状態が続いていると涙の分泌が抑えられてしまい、ドライアイにつながります。
ICL手術を受けるとドライアイになる?
ICL手術を受けることによってドライアイになったりドライアイが悪化するリスクは極めて低いとされています。
ICL手術は目の中にレンズを挿入することによって屈折異常を矯正する手術であり、レンズ挿入時に角膜を約3mmほど切開しますが、これは非常に小さな切開創なので涙の分泌量には影響しないと言われています。
同じ屈折矯正手術であるレーシックの場合は、角膜を広範囲に切開して屈折異常を矯正するため、角膜の知覚神経が遮断され、一時的にドライアイが起きやすい状態になります。
ICL手術は角膜を削ることなく視力矯正をするため、ドライアイになりにくいのです。
そのため「ドライアイになるのではないか」「ドライアイが悪化するのではないか」といった懸念からICL手術を忌避する必要はないと考えられます。
ICL手術によってドライアイになるリスクは低いですが、ICL手術を受けたことによってドライアイが改善するということもありません。
コンタクトレンズの装用が原因でドライアイになっている場合は、ICL手術によってコンタクトレンズが不要になり、ドライアイが改善することが期待できます。
しかしそれ以外の原因でドライアイが生じている場合はICL手術後もドライアイの治療が必要になる可能性が高いです。
ドライアイになったらどうしたらいい?日常でできるドライアイ対策
ICL手術を受ける・受けないにかかわらず、ドライアイの症状がある、眼科でドライアイと診断されたという場合は、改善できるよう日常で以下のようなことに気をつけるようにしましょう。
目を休ませる
パソコンやスマートフォンなど画面を見る場合は最低でも1時間に10〜15分ほど休憩を取り、目を休ませるようにしてください。
日中コンタクトレンズをずっとつけている場合は、夜間や週末は外す時間を増やすなどして目を休ませましょう。
コンタクトレンズはなるべく長時間装用しないようにし、可能な限りメガネを活用してください。
仕事やスポーツなどでメガネの着用が難しい場合はコンタクトレンズを新しいものに付け替えるのも効果的です。
また、パソコンやスマートフォンを使う場合はなるべく画面を下方に持ってくることで、目を大きく開かずに済むようになり、乾燥を防ぐことにつながります。
まばたきを意識する
パソコンの作業に集中していたり、スマートフォンの画面を注視していると無意識のうちにまばたきの回数が減ってしまいます。
まばたきによって涙の分泌を促したり、目全体に涙を行き渡らせることができるので、意識的にまばたきをするように心がけましょう。
環境を整える
ドライアイを悪化させる可能性がある環境要因を減らすようにしましょう。
エアコンの使いすぎに注意し、風が直接当たらないように調節してください。
空気が乾燥している場合は加湿器をつけるなどして対応しましょう。
アイメイクの汚れを落とす
アイメイクの汚れや詰まりによって涙の成分バランスが崩れてしまうため、日常的にアイメイクをする方はクレンジングで目元の汚れをしっかりと落とし、清潔に保つようにしましょう。
まつ毛の生え際や粘膜にアイラインを引かない、マスカラをまつ毛の根元までつけないなど意識するだけでも目元の汚れや詰まりが改善できるでしょう。
点眼する
涙と同じ濃度の塩分を含んだ目薬(人工涙液)や、傷を修復する作用のあるヒアルロン酸製剤を点眼することでドライアイの症状を緩和することができます。
人工涙液はドラッグストアでも購入できますが、ドライアイ治療を目的とした点眼薬にはいくつか種類があるので、眼科で適切な点眼薬を処方をしてもらうのが一番です。
まとめ
今回は、ICL手術を受けるとドライアイになるのか、またドライアイ予防のためにはどのように対処したら良いのかについてお話させていただきました。
結論としては、ICL手術によってドライアイになったり、ドライアイが悪化するといったことは基本的にないと言えます。
しかし、ICL手術をすることによってドライアイが改善するということもないため、すでにドライアイの症状がある方は治療のために引き続き眼科を受診することをおすすめします。
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