ICL手術は視力矯正の精度が高く術後の見え方が良好な人気の高い屈折矯正手術です。
適応範囲も広いため、レーシックが適応外だったという方も手術を受けられる可能性があります。
ICL手術は国内外で豊富な実績を持ち、安全性の高さが評価されている手術であり、日本でも2010年に厚生労働省の認可を受けています。
学会からの報告においてもリスクが低いとされている手術ですが、手術である以上感染症などの合併症が起こる可能性は0ではありません。
今回は、ICL手術を受けて合併症が生じるケースはどのくらいあるのか、ICL手術の臨床評価をもとに臨床試験内で実際に発生した合併症の割合をご紹介いたします。
この記事でわかること
- ICL手術の安全性と実績
- ICL手術の臨床成績
- ICL手術の合併症の発生割合
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ICL手術の安全性と実績
日本国内においてICL手術は近年よく耳にするようになった言葉ではないでしょうか。
視力を矯正する手術といえば「レーシック」のイメージが従来は強かったと思います。
しかし、実はICL手術はレーシックよりも古い歴史を持ち、国内外で進められてきた研究や臨床試験を経て得られた高いエビデンスのもと、世界で80以上の国で使用されています。
治療実績は世界で200万眼以上、日本国内でも年間1万件以上のICL手術が行われています。
ICL手術で使われるレンズは生体適合性が高く、異物として認識されにくいため、挿入したレンズが眼の中でゴロゴロすることはありません。
術後早い段階で視力が安定し、長期にわたって安定した屈折値が得られることが報告されており、レンズの寿命も半永久的と言われています。
具体的には術後5年以上の裸眼視力の平均は1.2以上とレーシックと比較して非常に安定しており、術後7年までほぼ近視のリバウンドがないと報告されています。
ICL手術の臨床評価と合併症の確率について
ICL手術の合併症は実際どのくらいの割合で起きるのでしょうか。
参考として、アメリカにおける臨床評価の概要をご紹介します。
「臨床評価」とは
臨床評価とは、そのものの有効性と安全性を人を対象とした試験を行い、評価することです。安全性、有効性等を証明するため、良否にかかわらず臨床データを収集、分析、評価します。新しい治療法の効果や安全性を確認するために行われる人を対象とした試験のことを「臨床試験」といいます。
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⚫︎臨床評価概要
本レンズの挿入によって、米国における臨床評価(近視用レンズ 症例数:523症例)では、白内障(2.9%:ただし白内障手術に至ったものは、0.4%)、レンズ交換・摘出(1.9%)、レンズ位置治し(0.8%)、眼圧上昇(0.8%)、角膜混濁/浮腫(0.4%)、網膜剥離(0.2%)等が認められました。
参照元:中平眼科クリニック
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上記に挙げられている数値から単純計算すると、523症例中、白内障が約15例、白内障手術に至ったものが約2例、レンズ交換や取り出しが約10例、レンズの位置治しが約4例、眼圧上昇が約4例、角膜混濁、角膜浮腫が約2例、網膜剥離が約1例と、おおよその数値を掴むことができます。
また、「独立行政法人医薬品医療機器総合機構」の公式ホームページより「アイシーエル 添付文書 第8版」に掲載されている臨床成績もご紹介します。
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⚫︎近視用モデル(モデル ICM)
2002年11月から2005年1月にかけて、国内の2施設にて83症例の屈折異常眼(近視、遠視及び乱視)を対象として臨床試験(治験)を実施した。
評価可能な73眼において有効性及び安全性を評価し、最終的な有用性を4段階(「極めて有用」「有用」「やや有用」「有用でない」)で判定した結果、「極めて有用」は65眼(89.0%)、「有用」は7眼(9.6%)、「有用でない」は1眼(1.4%)であった。
なお、本品に起因しない有害事象として高眼圧1眼(1.4%)及び水晶体混濁8眼(11.0%)が報告された。
また、2007年10月から2008年4月にかけて、本治験の術後平均経過期間4.1±0.4年の長期臨床成績を収集した。
追跡可能であった65眼において最終的な有用性を治験と同手法により判定した結果、「極めて有用」は58眼(89.2%)、「有用」は4眼(6.2%)、「やや有用」は0眼(0.0%)、「有用でない」は3眼(4.6%)であった。
なお、本品に起因しない有害事象として水晶体混濁14眼(21.5%)が報告された。
⚫︎近視性乱視用モデル(モデル TICM)
2002年1月から2006年6月にかけて、米国の7施設にて124名210眼の屈折異常眼(近視性乱視)を対象として臨床試験(治験)を実施し、評価可能な194眼について有効性及び安全性を評価した。裸眼視力について、術後12ヵ月において184眼(95.3%)が20/40、158眼(81.9%)が20/20を達成した。
全術後観察期間を通しての平均レンズ回転量(絶対値) 0.5°〜1.1°であり、 30°以上のレンズ回転を生じた例はなかった。
6眼(2.9%)において水晶体混濁が報告され、その内2眼(1.0%)は視力に影響があったが、術後12 ヵ月までにおいて水晶体再建術を施行された例はなかった。
その他、1眼(0.5%)において眼圧上昇、1眼(0.5%)において網膜剥離が報告された。
参照元:アイシーエル 添付文書 第8版
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上記の臨床成績より、近視用モデルにおいては73眼のうち1眼が「有用でない」という評価に、術後の長期臨床成績においては65眼のうち3眼が「有用でない」という評価になっています。
近視性乱視用モデルでは、194眼のうち水晶体混濁が6眼(そのうち2眼が視力に影響あり)、眼圧上昇が1眼、網膜剥離が1眼となっています。
今回ご紹介した臨床評価・臨床成績からも、ICL手術における合併症等のリスクが0ではないことが分かると思いますが、確率としては比較的低いものであるということも分かります。
ICL手術が低リスクであると学会からの報告があるように、安全性の高さが評価されている手術ではありますが、上記のように合併症が生じるケースが実際にあるという点も理解しておいてください。
手術を受ける眼科や担当医は慎重に選び、執刀実績や術後の保証についてもしっかりと確認しておくようにしましょう。
ICL手術の合併症の種類や確率についてさらに詳しく知りたいという方は以下の記事もぜひご一読くださいね。
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まとめ
今回は、ICL手術を受けて合併症が生じるケースは多いのか、臨床評価をもとに合併症の発生割合について具体的な数値を以てご紹介いたしました。
ICL手術は長い歴史を持ち、研究・開発を重ねて安全性が確立された視力矯正手術であり、日本でもその安全性の高さが認められています。
しかし合併症等が生じる可能性は0ではないため、どういったリスクがあるのか理解しておくことが大切です。
ICL手術で使われるレンズの安全性については以下の記事で解説していますので、こちらもぜひご一読ください。
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