ICL(眼内コンタクトレンズ)手術は屈折矯正手術の一種であり、近視や乱視などの屈折異常に対して効果的で安全性の高い治療法です。世界中で広く行われている治療で日本国内でも症例数が増加傾向にあります。
レーシック手術とは異なり、角膜を削ることなく視力を矯正できるため、角膜の厚さが不足している場合や、レーシック手術が適さない場合に適応されることもあります。
このように利点も大きいICL手術ですが、リスクもあり、その一つに「レンズ偏位」があります。
今回は、レンズ偏位のリスクや原因、対処法などについて解説いたします。
この記事でわかること
- ICL手術のリスク「レンズ偏位」とは
- レンズ偏位が起こる原因
- レンズ偏位への対処法
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レンズ偏位とは
「レンズ偏位」とは、眼内に挿入されたレンズが本来の位置からずれてしまう状態を意味します。
ICL手術におけるリスクの一つです。
ICL手術は精密検査を経て一人ひとりの目に適したサイズのレンズを選択しますが、レンズのサイズが適切でなかった場合や、手術時に正しい位置にレンズの挿入がされなかった場合、術後に顔や目などに衝撃を受けた場合などにレンズ偏位が発生することがあります。
レンズ偏位が起きると、視力に悪影響を与えるだけでなく、虹彩炎や緑内障といった他の眼疾患を引き起こす可能性もあるため、早期に対処する必要があります。
レンズ偏位が起きる主な原因
レンズ偏位が起きる原因としては主に以下の3つが考えられます。
①手術時
手術時に眼内レンズが正しい場所に配置されない場合や、挿入時の処置の誤りによってレンズがずれてしまうことがあります。
特に乱視用レンズは正しい軸の位置で挿入することが求められ、見え方に直結するため重要です。
②レンズの選択ミス
眼球の個々の形状やサイズによって最適なレンズが選択されますが、術前検査の精度が低いとレンズの選択ミスにつながることがあります。
レンズの選択ミスによってレンズ偏位が起きたと考えられる場合はレンズ交換が必要となる可能性が高いです。
③外的な要因
顔面や目に強い衝撃や圧力などが加わるとレンズがずれてしまうことがあります。
不慮の事故は避け難いですが、格闘技やラグビーなど激しいスポーツを行う可能性がある方はレンズ偏位のリスクが高いため注意が必要です。
激しいスポーツを日常的にされる方やアスリートの方など、個々のライフスタイルによってはICL手術以外の屈折矯正治療が推奨される場合もあります。
レンズ偏位のリスクと対処
レンズ偏位は以下のような影響を及ぼすことがあります。
最も大きな影響は「視力の低下」です。
レンズがずれると焦点がずれてしまい、視界がぼやけたり、二重視などの症状が現れることがあります。
特に乱視用レンズは大きなズレでなくとも、乱視軸が正しい軸からずれているだけで見え方に大きく影響します。
日常生活における視力の質が低下してしまうため、自覚症状が現れた場合や定期検診で発覚した場合は医師の判断を仰ぎましょう。
また、レンズがずれた状態で過ごしていると虹彩炎や緑内障など他の深刻な眼疾患を引き起こすリスクもあるため、早急に対処が必要です。
レンズ偏位のリスクを最小限にするためには、まず第一に一人ひとりの目に合った最適なレンズを選択することが重要です。
眼球の大きさや形状などに適したレンズを選択するためにも、術前検査の精度を上げることが重要となります。術前検査の精度が高ければレンズサイズの選択や挿入位置をより正確に判断することができます。
レンズ偏位が起きてしまった場合は必要に応じて再手術を行い、レンズを正しい位置に戻します。
サイズが合っていないことでレンズ偏位が起きたと考えられる場合にはレンズ交換となる場合もあります。
ICL手術は再手術やレンズ交換が可能な点がメリットではありますが、手術である以上、再手術、レンズ交換にもリスクが伴うため、個々の状況に応じて医師による慎重な判断が必要になります。
また、ICL手術後に目や顔面に強い衝撃を受けるような激しいスポーツを行わないようにすることも必要です。
格闘技やラグビーなど激しいスポーツを行っている方は、ICL手術よりもラゼックやスマートといった他の屈折矯正治療が適している場合があります。
ラゼック、スマートは格闘技など激しいスポーツを行う方に適している
ラゼック、スマートはいずれも近視や乱視を矯正することができる屈折矯正治療ですが、治療の方法がICL手術と異なります。
ラゼック(LASEK)は、角膜表面にある上皮をシート状に剥がし、その下の角膜実質にエキシマレーザーを照射して角膜の屈折力を調整する手術です。
レーシックと違い、フラップを作成しないため、角膜を大きく削ることなく視力を矯正できます。
レーシックが適応とならなかった角膜が薄い方や強度近視の方も適応となる可能性があります。
術後は角膜上皮が自然に再生するまで時間が必要となり、視力の回復には1週間程度かかります。また、痛みや不快感が術後3〜4日程度続くことがあります。
スマート(SMERT)もエキシマレーザーを使用した屈折矯正手術で、角膜にレーザーを照射し角膜の形状を変化させ、視力回復を目指す点はレーシックやラゼックと同様です。
スマートの場合はフラップを作成せず、角膜上皮を除去して手術を行う点が違いです。
こちらも角膜を厚く残すことができる治療のため、角膜が薄い方も手術を受けられる可能性があります。
ラゼック、スマートは前述の通り、フラップを作成しない手術のため、フラップトラブルのリスクがありません。
そのため格闘技やラグビーなど顔や目に強い衝撃を受ける可能性のあるスポーツや、人との接触が激しいスポーツを行う方は、ICL手術やレーシックよりもこれらの手術が適していると判断されることがあります。
普段行うスポーツなどご自身のライフスタイルについても手術前に医師にしっかりと共有をし、治療方法を相談するようにしてください。
ラゼック、スマートについては以下の記事により詳しくまとめておりますので、こちらもぜひ参考にしてみてくださいね。
*リンク
まとめ
今回は、レンズ偏位のリスクや原因、対処法などについて解説いたしました。
眼内に挿入されたレンズが本来の位置からずれてしまう状態を「レンズ偏位」といいます。
視力の低下だけでなく、他の重篤な眼疾患を引き起こすリスクもあるため、放置せず担当医に対処の判断を仰ぐようにしてください。
個々の状況によっては再手術やレンズ交換を必要とする場合もあります。
レンズ偏位の原因の一つに「顔や目に強い衝撃を受ける」といった外的な要因があります。
格闘技やラグビーなど激しいスポーツを行っている方はそうしたリスクがあるため、ICL手術よりもラゼックやスマートといった他の屈折矯正治療が適している場合があります。
自身のライフスタイルに合った治療方法を選択できるよう、まずは医師にしっかりと相談してみてくださいね。
ICL手術の流れや費用相場、メリット・デメリットなどについて詳しく知りたいという方は以下の記事もぜひご一読くださいね。
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