オルソケラトロジーという視力矯正治療をご存知でしょうか。
特殊なレンズを就寝中に装用し、角膜の形を一時的に変化させることで、日中を裸眼で過ごすことができるようにする近視矯正治療です。
今回は、オルソケラトロジーの仕組みについてや、メリット・デメリット、ICL手術の違いについて詳しく解説いたします。
この記事でわかること
- オルソケラトロジーとは
- オルソケラトロジーのメリット&デメリット
- オルソケラトロジーとICL手術の違い
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オルソケラトロジーとは?仕組みや効果について
オルソケラトロジーとは、オルソケラトロジーレンズという特殊なカーブデザインが施されたレンズを就寝時に装用することで角膜の形状を一時的に変化させ、日中を裸眼で過ごすことができるようにする近視矯正治療です。
アメリカでは約30年ほど前から実施されている近視矯正治療で、日本では2009年から始まりました。
オルソケラトロジーレンズは高酸素透過性のレンズで、ハードコンタクトレンズに似ており、取り扱い方法も基本的にハードコンタクトレンズと同じで簡単です。
睡眠中にレンズが目の中でズレたり外れたりしないよう特殊なデザインが施されており、一般的なコンタクトレンズよりもサイズが大きめです。
レンズの寿命は2〜3年ほどで交換が必要となる場合が多いです。
就寝時の装着によって矯正された視力はその後一定時間持続するため、日中裸眼で過ごすことができるようになります。
毎日レンズを装用した方がいい人もいれば、2〜3日に1回の装用だけで済む人もいます。
近視の強さや必要な視力、年齢などによって装用頻度が異なります。
子どものうちからオルソケラトロジーレンズを装用することで近視の進行抑制が期待できるとされており、保護者の間でも注目が高まっている治療法です。
オルソケラトロジーの仕組み
角膜や水晶体で屈折した光が網膜上で焦点を結ばず、ピントが合わないことでぼやけて見える状態が近視や遠視をはじめとする屈折異常です。
オルソケラトロジーレンズは角膜の形状を一時的に変化させることで屈折率を調整し、ピントが網膜上に合うように矯正します。
オルソケラトロジーレンズは内面に複数のカーブが施されており、中央部は扁平になっています。
角膜を圧迫し、角膜の形を平坦にすることで屈折率を変えて視力を矯正します。
角膜は一時的に形状を保つ性質があるため、しばらくの間効果が持続し、日中の視力が向上するという仕組みになっています。
オルソケラトロジーの効果
オルソケラトロジーの効果には個人差があるものの、一般的に一週間くらいで十分な視力が得られるようになります。早い場合はレンズ装用後、数時間で効果を感じられます。
治療を始めたばかりの時期は夕方ごろには視力の低下を感じることがあります。
効果の持続時間は8時間〜36時間ほどで、装着期間が長くなれば持続力も長くなります。
⚫︎オルソケラトロジーはこんな方におすすめ
- 裸眼でスポーツをしたい方
- 眼鏡やコンタクトレンズを着用する不便さから解放されたい方
- レーシックやICL手術などの外科的手術に抵抗がある方
⚫︎オルソケラトロジーが受けられない方
- 妊娠中、授乳中、妊娠の可能性がある方
- 定期的に眼科に通院することができない方
- 屈折矯正手術を受けたことがある方
- 角膜や結膜に疾患のある方
- 円錐角膜の方
- 重症のドライアイの方
オルソケラトロジーのメリット
ここからはオルソケラトロジーのメリットとデメリットについて詳しく見ていきましょう。
オルソケラトロジーのメリット1:日中裸眼で生活できる
オルソケラトロジーは就寝時に特殊なレンズを装着し角膜の形状を一時的に変化させることで近視を矯正する治療です。
日中裸眼で過ごすことができるようになるため、日中に眼鏡やコンタクトレンズを使用する必要がなくなります。
スポーツや仕事などで眼鏡の着用が難しい方にとっても魅力的な治療法です。
また、コンタクトレンズの使用によってドライアイが生じている人や、長時間の使用で眼精疲労を起こしやすい人にとっても、コンタクトレンズ不要で裸眼で過ごせるようになるオルソケラトロジーはメリットが大きいと言えます。
オルソケラトロジーのメリット2:手術の必要がない
オルソケラトロジーはレンズを装着することで近視を矯正する治療法であるため、外科的な手術を受ける必要がありません。レーシックやICLは手術が必要なため、なかなか踏み出せないという人も多いと思いますが、その点オルソケラトロジーは気軽に取り入れやすい治療法です。
また、眼鏡やコンタクトレンズの生活に戻したい場合は装用を中止することで角膜を元の状態に戻すことができます。
レーシック手術は角膜を削るため元に戻せませんし、ICL手術はレンズを取り出せば元に戻すことができますが、レンズ摘出のための再手術をする必要があります。
ハードルの高い手術ではなく、まずは身近な方法で近視を矯正したいという人にとって魅力的な治療法です。
オルソケラトロジーのメリット3:近視の進行を抑制する効果
オルソケラトロジーは周辺部のピントのズレに働きかけることによって近視の進行を抑制する効果が期待できる治療法です。近視が強いほどより抑制効果が期待できるとされています。
また、幼少期の近視抑制に特に効果が期待できることも分かっており、保護者の間で注目が高まっています。
オルソケラトロジーのデメリット
続いてオルソケラトロジーのデメリットを見てみましょう。
オルソケラトロジーのデメリット1:レンズのケアが必要
オルソケラトロジーはコンタクトレンズと同様、毎日レンズのケアをしなければいけません。不適切・不衛生な取り扱いをしていると、角膜炎や角膜上皮障害、角膜感染症といった合併症が起こる可能性があるため、適切なケアが必要となります。
レンズのケアが面倒で疎かになってしまうという方はオルソケラトロジーは不向きかもしれません。
オルソケラトロジーのデメリット2:夜間のハロー・グレア現象
オルソケラトロジーを装用中は夜間に信号や街灯などの光がにじんで見える「ハロー・グレア現象」が起きる場合があります。
慣れてくると気にならなくなったり症状が改善したりしますが、夜間の車の運転などに支障をきたす場合は使用を中断した方が良いと判断されることもあります。
オルソケラトロジーのデメリット3:その他
レンズに慣れるまでは装用感が気になることがあり、視力が安定するまでは見えにくい場合があります。
また、乱視や強度近視の度合いによってはオルソケラトロジーで矯正できない場合があります。
オルソケラトロジーとICL手術の違い
オルソケラトロジーは特殊なレンズを就寝時に装用して角膜の形状を一時的に変化させ、日中裸眼で過ごせるようにする近視矯正治療であるのに対し、ICL手術は角膜を数ミリ切開し、眼の中にレンズを挿入することで屈折率を変えて視力を矯正する手術です。
オルソケラトロジーは近視に特化した治療法であり、乱視や強度近視の度合いによっては対応できないことがありますが、ICL手術は近視だけでなく遠視、乱視、老眼も矯正することができ、強度近視の適応範囲も広いです。
また、オルソケラトロジーは装用を続けなければいけませんが、ICL手術は日帰り手術を一回受けるだけでその後は半永久的に裸眼で過ごすことができると期待されています。
オルソケラトロジーの費用は年間15〜20万円ほど、ICL手術の費用は1度きりの手術で60〜70万円ほどとなっています。
屈折異常を矯正する治療であり、いずれも元に戻すことができる可逆性のある治療という点は同じですが、治療方法や対応できる屈折異常の種類、かかる費用などはほとんど異なります。
どちらの治療法が自分の要望やライフスタイルに合っているか、まずは眼科医に相談してみてはいかがでしょうか。
まとめ
今回は、オルソケラトロジーの仕組みと効果、オルソケラトロジーのメリット&デメリット、オルソケラトロジーとICL手術の違いについてお話ししました。
オルソケラトロジーは手術の必要がない治療法で、夜間に特殊なレンズを装用することで就寝中に視力を矯正し、日中裸眼で過ごすことができるようにする近視矯正治療です。
ICL手術やレーシックと全く異なる治療なので、どの視力矯正治療が自分に合っているか、今回の記事を参考に検討してみてくださいね。
どれか1種類だけでなく、いくつかの屈折矯正治療に精通した眼科医にどの治療が自分に合いそうか相談してみるのもおすすめです。
ICL手術の流れやメリット・デメリット、合併症等のリスクについても詳しく知りたいという方は、以下の記事に詳しくまとめていますのでこちらもぜひチェックしてみてくださいね!
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