ICL(眼内コンタクトレンズ)手術は、目の中に人工のレンズを埋め込むことで視力を回復する屈折矯正手術です。
ICL手術の適応条件や禁忌については、日本眼科学会が提示している「屈折矯正手術ガイドライン」で掲げられています。
今回は、ICL手術の適応範囲や条件、禁忌について詳しく解説いたします。
この記事でわかること
- ICL手術の適応範囲や条件
- ICL手術の禁忌
- 白内障でも受けられるのか
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ICL手術の適応条件や禁忌について
ICL手術は適応範囲が広く、「角膜の厚みが足りない」「近視が強すぎる」などの理由でレーシックが適応とならなかった方でも手術を受けられるケースが多いです。
しかし、そんな適応範囲の広いICL手術にも適応条件や禁忌が存在します。
◆適応(受けられる方)
- 18歳以上の方
- -6.0D以上の強度近視の方(-3.0D以上-6.0D未満、-15.0D以上は慎重対応)
- 前房深度2.8mm以上の方
- 最低角膜内皮細胞密度(内皮細胞数)が規定数値以上の方
◆禁忌(受けられない方)
- 18歳未満の方
- 妊娠中、授乳中の方
- 視力の変動が大きい方
- 前房深度(角膜と水晶体の距離)が2.8mm未満の方
- 目の疾患や重篤な全身疾患がある方
上記に挙げているのは原則的な適応条件や禁忌なので、実際に手術を受けられるかどうかは適応検査を受けた後の医師の判断に従ってください。
年齢
★18歳以上の方〜45歳前後
近視の原因は様々ですが、「眼軸」(=眼の奥行き)が伸びることによって近視化することが多いです。
近視と密接な関係にある眼軸は成長期の体の発達に伴って伸びやすく、成長期の子どもは近視度数が変化しやすい傾向があります。
そのため18歳未満の方は視力が変動しやすく、成長とともに大きく変わる可能性があるという理由でICL手術に適応しないとされています。
また、ICL手術に年齢の上限はありませんが、水晶体の加齢変化を考慮すると45歳くらいまでが望ましいとされています。
加齢により水晶体は徐々に硬くなり、ピントの調整機能が衰えていきます。
白内障や老眼といった目の疾患が発症する可能性が高まっていくため、適応年齢は45歳前後とされているのです。
すでに白内障を発症している場合はまず白内障の手術を受けてから屈折矯正のためのレンズを入れるという流れになります。
白内障の方がICL手術を受けたい場合どういう対応になるのか、以下の記事により詳しくまとめてありますので、こちらもぜひご覧ください。
屈折値
★屈折値-6D以上の近視が適応
★-3.0D以上-6.0D未満、-15.0D以上の強度近視については慎重対応
ICL手術は適応範囲がかなり広く、角膜の薄い方や強度近視の方も受けることができる屈折矯正手術です。
視力矯正範囲は屈折値-3.0D〜-18.0Dで、-15.0D以上の方は慎重対応となっています。
レーシックは軽度近視が得意なのに対し、ICL手術は中等度〜強度近視の矯正が得意と言えます。
視力
★視力が安定していること
ICL手術は直近1年以内の近視や乱視などの屈折異常の進行が大きいなど、視力が安定していない方は受けることができません。
近視の度数が安定していないと適切なレンズを選ぶのが難しく、ICL手術を受けても希望する見え方にならないことがあります。
前房深度
★前房深度が2.8mm以上
ICL手術は眼の中に小さな眼内レンズを入れて屈折異常を矯正する手術のため、眼にレンズを入れるための十分なスペースがない場合は手術が受けられません。
緑内障など合併症のリスクも生じます。
そのため角膜と水晶体の距離をあらわす「前房深度」が2.8mm以上ある方が適応となります。
前房深度は適応検査で調べることができますので、その数値次第で医師に判断を仰いでください。
最低角膜内皮細胞密度
★最低角膜内皮細胞密度が規定数値以上
角膜内皮細胞密度とは角膜の最内側にある細胞の密度をあらわす数値です。
角膜内皮細胞密度最低値は年齢によって以下のように規定されています。
年齢21~25歳 2800個/mm2以上
年齢31~35歳 2400個/mm2以上
年齢26~30歳 2650個/mm2以上
年齢36~40歳 2200個/mm2以上
コンタクトレンズの長期的な使用や誤った使用により角膜が酵素不足に陥ると細胞が減少し、この数値が低くなります。
最低角膜内皮細胞密度が規定数値以上の方であればICL手術を受けることができます。
こちらも検査によって分かりますので、適応検査にて医師の判断を仰いでください。
病気の有無
★眼疾患や重篤な全身疾患がないこと
白内障、緑内障、網膜疾患、虹彩・ぶどう膜炎、水晶体亜脱臼、偽落屑症候群などの目の病気がある方や、重度の糖尿病、膠原病などを患っている方は、傷の治癒に影響を与える可能性が高いため、ICL手術を受けることができません。
症状の程度によって医師の判断で手術の可否が決まることもあるため、まずは一度受診をして自身の病気の有無について確認するようにしてください。
その他
★妊娠中、授乳中ではないこと
手術前後に抗生剤の点眼や内服を行うため、妊娠中や授乳中の場合は手術を避けましょう。
★特殊なケース
円錐角膜など角膜が特殊な形状をしている方は手術を受けられない場合があります。
上記に挙げた条件を満たしていても個々の目の状態を診た医師の判断によって適応外となることがありますので、まずは適応検査を受けるようにしてください。
まとめ
今回は、ICL手術の適応範囲や条件、禁忌について詳しく解説いたしました。
ICL手術はレーシックに比べて適応範囲が広いことが利点です。
強度近視の方でも受けることができ、術後の近視戻りが少なく、見え方が良好である点からもICL手術を選択する方が増えてきていますが、適応条件や禁忌も存在しますので知っておくといいでしょう。
今回の記事をぜひ参考にしてみてくださいね。
ICL手術とレーシック手術の違いについては以下の記事で詳しく紹介しています。
ぜひこちらもご一読くださいね。