加齢に伴い、誰にでも起こる目の老化現象である「老眼」。
歳を取るにつれて目の中でピント調節の役割を果たす水晶体の弾力性が失われ、近くのものが見えにくくなります。
視力矯正手術として近年ますます注目されているICL手術は、近視や遠視、乱視の矯正に効果的とされていますが、老眼にも対応できるのでしょうか。
本記事では、老眼のメカニズムについて解説するとともに、ICL手術で老眼を矯正することはできるのかについても解説いたします。
この記事でわかること
- 老眼のメカニズム
- ICL手術で老眼を矯正することはできるのか
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老眼のメカニズムについて
老眼(医学的には「老視」と呼ばれます)は、加齢により目のピント調節能力が低下し、特に近くのものが見えにくくなる状態を指します。
これは視力そのものが悪くなるというよりも、「調節力」の衰えが主な原因です。
老眼は目の中にある「水晶体」というピント調節を行うレンズの役割を持つ器官の柔軟性が加齢とともに低下し、ピント調節が難しくなることで起こります。
水晶体は弾力性を持つ器官で、近くを見るときには厚く、遠くを見るときには薄くなることでピントを合わせていますが、加齢により水晶体が硬くなるとこのピント調節が困難になります。
また、水晶体の厚みを調節する役割を持つ「毛様体筋」という目の筋肉も加齢により衰え、収縮力が弱まるためさらにピント調節が難しくなります。
老眼は病気ではありませんが、治療や矯正をせず放置すると目の疲れを感じたり、頭痛や肩こりなどの症状を伴うことがあります。
◆老眼の主な症状
- 目が疲れやすい
- 目がかすむ
- 近くの文字が見えづらい
- 小さな文字が見えづらい
- 頭痛
- 肩こり
加齢によって水晶体が硬くなる
水晶体は、目の中でピントを調節する役割を担う、透明なラグビーボールのような形をした器官です。
水晶体は、若いうちは柔らかく弾力があるため、遠くを見るときは薄く、近くを見るときは厚くなることでピントを自在に調整することができます。
しかし、40代前後からこの水晶体が徐々に硬くなっていき、厚みを変化させるための弾力性が低下します。
その結果、近くにピントを合わせることが難しくなり、新聞やスマートフォンなど近くの文字がぼやけて見えるようになります。
加齢によって毛様体筋が衰える
毛様体筋は水晶体の厚みを調節し、ピント調節を行う役割を果たす目の筋肉です。
毛様体筋が収縮することで水晶体が厚くなって近くにピントが合い、逆に弛緩することで水晶体が薄くなり遠くにピントが合います。
しかし加齢とともにこの毛様体筋の機能も衰えてしまい、水晶体をうまく変化させることができなくなります。
毛様体筋の働きが弱くなると、仮に水晶体の弾力性が残っていたとしてもピントの調節力は低下してしまいます。

ICL手術で老眼を矯正することはできる?
ICL手術は、近視・遠視・乱視といった屈折異常の矯正を目的に日本国内で広く行われています。
従来のICL手術は近視や遠視、乱視の矯正は可能であるものの、老眼の矯正には対応していませんでした。
ICL手術は有水晶体眼内レンズとも呼ばれますが、その名の通り水晶体を残したまま行う手術です。
老眼は水晶体自体に変化が起きる目の老化現象であるため、ICLでは対応できませんでした。
しかし近年、遠近両用の多焦点IPCLレンズ(老眼用ICL)が登場し、老眼にも対応できるようになりました。
この多焦点IPCLは、白内障手術時に用いられる多焦点眼内レンズの構造を応用しており、遠くと近く、中間と異なる焦点に合わせることができるため、老眼の症状の軽減に役立ちます。
ただし、光を遠方、中間、近方に振り分けることになるため、通常のICLレンズと比較すると見え方の質が劣るというデメリットはあるものの、手元の見え方は大幅に改善できると期待できます。
IPCLはイギリスのEyeOL社から2014年に発売された眼内コンタクトレンズで、2017年には老視用IPCL V2.0がヨーロッパでCEマークを取得しています。
現在、世界40カ国以上で100,000枚以上の症例数があります。
日本国内では多焦点ICLはまだ厚生労働省未承認の治療法であり、自由診療の範囲で限られた医療施設でのみ実施されています。

まとめ
今回は、老眼のメカニズムについて解説するとともに、ICL手術で老眼を矯正することはできるのかについても解説いたしました。
老眼は、水晶体の柔軟性の低下と毛様体筋の衰えにより、近くのものが見えづらくなる症状です。
ICL手術は、近視や遠視、乱視の矯正に効果的ですが、従来は老眼の矯正には対応していませんでした。
しかし、近年登場した多焦点ICLレンズにより、老眼の矯正も可能となりました。
老眼の症状に悩んでいる方は、眼科専門医に相談の上、ICL手術の適応検査を受けてみてくださいね。
ICL手術の流れや費用相場、メリット・デメリットなどについて詳しく知りたいという方は以下の記事もぜひご一読くださいね。
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