視力矯正手術の選択肢として近年特に注目されているICL手術。
ICL手術に使われるレンズの中でも「プレミアムICL」は、従来のレンズよりも様々な点が改善されており、注目されています。
ICL手術の課題とも言える夜間の見え方の質向上を実現したプレミアムICLは、どのような特徴があるのか、どのような方に向いているレンズなのか、気になっている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、プレミアムICLの特徴や他のレンズとの違いなどをわかりやすく解説していきます。
この記事でわかること
- プレミアムICLの特徴
- プレミアムICLと他のICLレンズの違い
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「プレミアムICL(プレミアム眼内コンタクトレンズ)」の特徴
プレミアムICLは、イギリスのEyeOL社が製造する後房型レンズです。
ヨーロッパの安全基準である「CEマーク」を取得しており、世界20カ国以上で使用されています。
2017年に登場したプレミアムICLは、ICL手術における新しいレンズの選択肢として注目されています。

高度なレンズ素材と安定性を高める設計
プレミアムICLには、「ハイブリッド・ハイドロフィリック・アクリル」素材が使用されています。
この素材は白内障の眼内レンズにも使用されており、すでに眼内で使用されている豊富な実績があります。
「ハイブリッド・ハイドロフィリック・アクリル」という素材は水分含有量が高く、タンパク質などの汚れが付着しにくいという特性を持ちます。
安全性が高く、視機能を長期間にわたって安定的に維持できるとされています。
合併症リスクを抑えるための工夫も施されています。
レンズ表面は滑らかに加工されており、乱視軸のカスタマイズも可能です。
また、眼内での安定性を高めるため、従来のICLレンズの支持部が4つであったのに対し、プレミアムICLは6つの支持部をもつ独自設計が採用されています。
安全性が向上したレンズのホール構造
プレミアムICLには7つのホールが設けられており、これにより眼内の房水の循環がスムーズに行える設計となっています。
以前は循環経路確保のために虹彩切開術が必要でしたが、ホール構造の導入によりこれが不要となり、患者さんの負担軽減や手術の安全性向上に貢献しています。
このホール構造は眼圧上昇のリスクが軽減されるだけでなく、白内障や緑内障の発症を抑制する可能性も期待されていますが、そちらについては現在正式な承認はされていません。
ハロー・グレアを軽減する光学部設計
ICL手術における課題として、夜間に発生するハロー・グレア(光のにじみやまぶしさ)が挙げられます。
瞳孔は、明るい所では小さくなり、暗い所では大きくなります。
暗所においてハロー・グレアの現象が起きるのは、眼内レンズの光学部(中央にあるものを見る部分)よりも瞳孔径が大きくなることで、光が光学部の外側に当たり、そこからの反射光が視界に干渉することが原因です。
プレミアムICLはこの課題を克服するため、光学部の直径を大きく設計しています。
従来のICLレンズの光学部は6.1mm〜6.6mmが主流でしたが、プレミアムICLは6.6mmに加え、新たに登場した「プレミアムICL Pro」では6.8mm、「Pro+」では7.0mmのサイズが用意されています。
瞳孔の大きさに合わせたレンズが選択できるようになったことによって、暗所でも瞳孔より光学部が小さくなるリスクを減らし、ハロー・グレアの現象を抑えることが期待できます。
日本人の瞳孔径は平均4.4mmで、暗所では最大8mmほどまで拡大します。
特に若年層は瞳孔が大きいため、光学部が小さいレンズを選んでしまうと、ICL手術後にハロー・グレアが発生しやすくなります。
プレミアムICLのように光学径の大きなレンズを選ぶことで、暗所でも快適な視界が得られやすくなり、夜間の視力の質の向上が期待できます。
さらに、プレミアムICLは13種類のレンズサイズが用意されているため、患者さんの眼のサイズや瞳孔径に合わせて最適なレンズを選択できます。これにより、術後の視界の質や安定性をさらに高めることが可能です。
老眼にも対応可能
プレミアムICLは近視・遠視・乱視の矯正に加え、世界で初めて老眼にも対応可能なフェイキックレンズとして開発されました。
現在は老眼に対応できるICLレンズはプレミアムICLのみとなっています。
プレミアムICLと他のレンズとの違い

EVO+ ICL
EVO+ ICLは、アメリカ・STAAR社製の後房型レンズです。
コラマー(Collamer)という親水性の高い素材で作られています。
国内で一般的に「ICLレンズ」と言えばこのSTAAR社製のレンズを指すことが多く、アメリカのFDAの承認を受けており、日本でも厚生労働省に唯一認可されているレンズです。
国内で最初に発売され、最も実績が多いレンズです。
アイクリルレンズ
アイクリルレンズは、スイス・WEYEZER社製の後房型レンズです。
素材はプレミアムレンズと同じ「ハイブリッド・ハイドロフィリックアクリル」を採用しており、こちらもCEマークを取得しているレンズです。
レンズの安定感が比較的低いとされており、おすすめしない眼科もあります。
国内では症例が少ないレンズです。
では、ICL手術における合併症のリスクとしてよく挙げられる「ハロー・グレア」の発生を最も抑制できるレンズはどれになるのでしょうか。
名称 | 光学部 サイズ |
レンズの特徴 |
プレミアム ICL Pro+ | 7.0mm | 光学部が最も大きく設計されており、 暗い環境で瞳孔が大きくなった場合でもレンズの周辺部から直接光が入りこむのを防ぐことができ、 より安定した夜間視力が見込まれます。 |
プレミアム ICL Pro | 6.8mm | 瞳孔が大きくなる環境においても光学部が大きく設計されており、十分にカバーできるため、 まぶしさやにじみといった夜間の視界の乱れを抑える設計になっています。 |
プレミアム ICL | 6.6mm | 上記2つに比べて光学部のサイズは小さいですが、 夜間の瞳孔サイズの平均値である6.5mmと同等の大きさをカバーできているため、 ハロー・グレアの発生を抑制できる設計と言えます。 |
EVO+ ICL | 6.1mm | 夜間の瞳孔サイズの平均値である6.5mmよりも光学部のサイズが小さいため、 人によってはハロー・グレアの発生が懸念されます。 |
アイクリルレンズ | 5.5mm | 他のレンズと比べ最も光学部サイズが小さく、 夜間の瞳孔サイズの平均値よりも小さい設計のため、 ハロー・グレアの発生確率が最も高いと予想されます。 |
光学部のサイズを比較してみると、プレミアムICLレンズのシリーズが最も光学部サイズが大きく設計されており、ハロー・グレアの抑制が特に期待できると言えます。
しかし、あくまでも上記は光学部のサイズの比較であり、最も重要なのはご自身の目に最適なサイズであることです。
暗所における瞳孔径が大きいという特徴をお持ちの方は、光学部のサイズが大きいレンズを選択する方がハロー・グレアの発生は軽減できる可能性がありますが、特にそうではない場合、光学部の大きいレンズを選択するメリットは少なくなります。
また、ハロー・グレアの抑制だけでなく、眼内でのレンズの安定性や、ライフスタイルによっても最適なレンズの種類は変わってきますので、手術を担当する医師にしっかりと相談をし、ご自身にとってベストなレンズを選択するようにしましょう。
まとめ
今回は、ICL手術で使われる「プレミアムICL」の魅力や特徴を他のレンズと比較しながら解説いたしました。
プレミアムICLは、視力矯正だけでなく夜間視力や老眼対応など、多機能で安全性の高い次世代型レンズです。光学部の大きさをはじめとした設計の工夫によって、従来のICLの課題を改善しています。自身の瞳孔サイズやライフスタイルに合わせて、最適なレンズ選びをすることが、より快適な視生活を手に入れるカギとなります。
ICL手術の流れやメリット・デメリットについて詳しく知りたいという方は以下の記事も参考にしてみてくださいね。
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